ひとやすみ

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ダサいと思う人にこそMCバトルを勧めたい(2)

続いては②,韻を踏みにいって言いたいこと言えてないという中途半端さに違和感があるという点について。

そもそも韻を踏むことの意味は,耳で聞いた時に気持ちいい語調にすることと,関連性のない二つの単語を語感でもって結びつけることの二つにあると思う。

MCバトルにおいては前者もさることながら後者も重要である。あくまで「バトル」である以上,相手を言い負かすような一言が必要になるからだ。だから例えば相手の容姿に対するディスから入って,自分の言いたい結論につなげるために韻を使うといったことが考えられる。

ではそんな韻を巧みに使ったバトルを見てみたい。

 

1. AUTHORITY vs CIMA

www.youtube.com現役最強のラッパーauthorityと大阪の古豪CIMAが大阪最大のMCバトルの大会SPOTLIGHTでぶつかった試合。

CIMAは語尾でしっかり韻を踏むという大阪のスタイルと高いバイブスで会場を沸かせる。

対するauthorityは即興とは思えないワードセンスで韻を踏むことに定評がある。CIMAの「テコンドー」という言葉に対して「また来て今度」と同音異義語で踏み返したり,「マイノリティ」に対して「ダイオキシン」で踏むなどこれで踏めばかっこよく聞こえるという言葉を確実に決めてくる。さらに終盤には色を表す言葉を絡めて韻を踏むなど言葉遊びた巧な点もauthorityの強さである。

 

2. SAM vs 裂固

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裂固SAMはともに押韻で注目されるラッパーだ。しかし,一口で押韻が強いといっても二人にスタイルは微妙に異なる。裂固はあくまで即興にこだわり,これでもかというほど韻を踏んでいくスタイル,これに対してSAMは韻を踏んでいった先にオチをしっかりつけるスタイルである。

最初に書いた韻を踏む意味になぞらえると,裂固はリズムを作る,SAMは意味をつなげることにそれぞれ重点があるといえるだろう。

 

3.  韻マン vs Amateras

www.youtube.com若干イロモノになるが,韻のリズムの側面と意味の側面がしっかり出た試合なので紹介しておきたい。

韻マンはその名の通り,いかに韻を踏めるかに重きを置いているラッパーだ。韻を踏むためには意味のつながりを気にしないどころか,母音が完全に一致していなくても語感で踏めるものは全部韻として踏んでしまうという「語感踏み」を多用する。

これに対してローランドのような見た目のAmaterasは見た目通り金持ちキャラのラッパーだ。とはいえ単にキャラに頼って戦うだけでなく,高いラップセンスも持ち合わせている。彼が得意なのはこの試合の終盤にも出てくるような同音異義語で踏むというやり方でその見せ方,意味の通し方が非常に上手い。

韻を踏むことの意味を主張し続けるAmaterasとそれを無視して韻を踏み続ける韻マンAmaterasは一見するとしゃべっているだけと見せつつ,最後に韻で一撃決めるというやり方からも韻を踏むことの意味の一端が見えるのではないだろうか。