ダサいと思う人にこそMCバトルを勧めたい(3)

最後は③「口喧嘩」に対する不快感である。

MCバトルを見てるとヤンキーの兄ちゃんがかっこつけてののしりあってるようにしか見えない人ももしかしたらいるかもしれない。しかし，MCバトルの中にも真剣な議論がなされているものは少なくないのだ。見限るには早い。

 １. ヤングたかじん(呂布カルマ) vs NAIKA MC

www.youtube.comヤングたかじんと名乗っているが，正体は現役の中でも最強のラッパーと名高い呂布カルマである。呂布カルマは相手の話を徹底的に批判していくスタイルで一見すると説法しているだけに見えるが，さりげないリズムキープ，同音異義語を使った韻といったスキルを見せてくれる(前回紹介したAmaterasは呂布のフォロワーといえるだろう)。

対するはNAIKA MC。熱のこもったアンサーで会場を沸かせる。この人についてはスキルがどうこうというより熱いという言葉でしか説明がつかない。彼のバトルからはMCバトルの本質が対話であることがよくわかると思う。

この試合はUMBという国内最大規模の大会の試合で，漫才で言えばM１である。そしてその決勝で最も冷たいMC呂布カルマと熱い男NAIKAがぶつかるという構図になっている。ひたすら盛り上げるNAIKAを呂布がすべて落としていく。この完全な対話試合は口喧嘩よりも一つ高い次元にあると思うし，初めて見る人にもわかりやすいのではないか。

いわゆる「論破」の動画を見るのが好きであれば呂布カルマのバトルは気に入るんじゃないかと。

2. 輪入道 vs JAKE

www.youtube.comJAKEは鳥取出身のラッパーで，人をむやみに気づつけず正面から対話していくタイプのラッパー。対する千葉県出身の輪入道(わにゅうどう)も相手の話をしっかり受け止めて，揚げ足を取ったりせず，まっすぐにアンサーを返していくスタイルのラッパーである。

お互いに正面からの対話の試合で延長に次ぐ延長となりかなり見ごたえのある試合になっている。初回に紹介したMU-TONらのバトルとも前回紹介したSAMらのバトルともかなり種類の違うバトルになっていることがわかっていただけるだろうか。

任侠映画・不良映画のノリが好きならばまさに「男の会話」を繰り広げてくれる輪入道らのバトルは好きだと思う。

というわけで３回にわたって，様々な角度からMCバトルを紹介してきた。

最後にそれでもあんまりよさがわからなかったよという人のためにもう一試合，音楽的にも押韻の技術としてもそして対話としてもすぐれた試合を一つ挙げておきたい。やはり一番良いものを見るのが一番参考になるだろうし。

３.  R-指定 vs 晋平太

 www.youtube.comそれでは。